未経験からエンジニアに転職して最初の1週間が終わった
忘れないうちに書いておく
経歴で押し切った転職
得てして初心を忘れるタイプなので、今ホットな未経験からのエンジニア転職の実体験を記事にしておこうと思う。
最初に状況を整理しよう。
- 旧帝大 理系院卒(情報系ではない)
- 前職は一部上場の製造業
- プログラミング経験は多少あり
- ネットワーク・インフラ関係は全く未経験
- クラウド関連のエンジニアとして転職
- フルリモート前提の勤務体系
簡単に言うと、業務上必要な知識や技術力はほぼなかったが、経歴がそこそこマトモというのでどうにか雇ってもらえた、というイメージかと思う。
しいて言うなら私は面接で必要となる自己分析についてはかなり得意で、かつ人前で話すのにもあまり緊張しないタイプだ。 もしかしたらそうした要素の方が高く評価されていた可能性もあるが、あくまでそれは学歴などの書類に現れるステータスがあって面接に進めたからこそだろう。
学歴や大企業出身というのは学習内容や業務内容それ自体よりも、暗黙的に保証される社会性や家庭環境の比重が大きいのかもしれない。 後述するが、今回はフルリモート採用枠というのもあって、こうした要素がより重視されたのではないかと踏んでいる。
今思えば、新卒で就活していた頃は本当に何も考えていないボケナス人間だったが、それでも「まあ選択ミスったとしてもせっかく旧帝大の新卒チケットあるなら転職の選択肢が狭まりにくい大企業をチョイスしたほうがいいよね」くらいは考えていたので、ボケナスなりにクリティカルな判断ミスは避けていたと いえる。
基本的に自分は昔からミスの回数は多いが、試行回数を普通より多くすることでミスを挽回できるだけの新手段を見つけて突き進んでいくタイプなので、ミスった場合にどうなるかくらいは当時の足りない頭でも考えられていたようだ。
内定から入社までの期間
ちなみに内定が出たのが昨年の11月の中頃。そこから前職を昨年12月初旬に怒涛の勢いで退職し、1月1日入社となった。
もともと応募時は退職で揉めた場合を考慮して2月1日の希望で出していたが、無理を言って前倒ししてもらった経緯がある。柔軟で感動した。 総務の方は大変だったと思うがめちゃくちゃ丁寧に対応してくれた。
そんなこんなで初出勤日は1月5日ということに決まった。
入社前に配属予定先のマネージャーの方々と会話する機会があり、せっかくなら入社後に必要になりそうな資格の勉強は先行してやっておくとよいと勧められた。 こちらから何かやっておくべき内容はあるかとちょうど聞こうと思っていたタイミングだったので、なんてしっかりしてる職場なんだろうと感じた。
日頃の業務にちゃんと余裕が確保され、先を見据えた運営となっていることがよく分かる。 仮に未経験の中途採用がめずらしかったのだとしても、日々の業務が限界まで詰め込まれていると、なかなかこうした必須でないことの対応というのは遅くなるものだ。 それが当の本人が感じるタイミングとラップするレベルなのだから、ここまでくるとむしろ私のアクションが遅すぎる説すらある。早くも私の改善すべきポイントが露呈した。
AZ-900受からなければ死ゾ
話が少し逸れたが、そうした流 れもありAZ-900という資格の勉強をすることになった。これはMicrosoftのクラウドサービスAzureに関する資格で、いくつかあるうちの一番簡単なやつである。
いくら未経験とはいえ、これからクラウドエンジニアをやるにあたって、さすがに合格できないと人権を失う。なんせ入社後にはこれよりも難しい資格を取得することが求められるのだ。
仕事というのは最初に無能のレッテルが貼られると汚名返上するのに甚大な努力が必要である。そしてその甚大な努力ができるような人間ならそもそも最初にコケない。
つまり最初にロケットスタートを切れない人間に未来などない。このAZ-900受験、不合格それ即ち死である。
失敗すれば、私自身のみならず、私の面接を担当した方々すら窮地に立たせかねない大失態となるだろう。
結論から言うと、初出勤の前日、1月4日に受験して合格した。落ちるのを期待していた人たちには申し訳ないが、受かったよ、さすがにね。
入社後研修
実は、私は昨年の7月あたりから育休を取っていた。この初出勤、実に半年ぶりの社会復帰である。
入社後の研修は約2週間あり、スケジュールはそれなりに余裕があるほうだと思う。
研修に見る企業姿勢の違い
また、内容に関しても業務ルール等の説明の比重はそんなに大きくなく、自己分析やキャリア形成、重役との対話など今いちど自分自身を振り返るような内容が多い。
全体として、かなりエンジニアファーストな雰囲気があり、本当にこんなに慮ってもらっていいのかと逆に心配になるくらい個別のキャリアプランを重視している印象を受けた。
個別 のキャリアプランと言うと、大企業だと「ウチは規模が大きくいろんな領域の部署があるから、やる気次第でどんなことも実現できる」というような話があったりするが、そういうのはほとんどの場合、理論的には可能だけど実態としては到底不可能な夢物語だ。
というのも大企業の場合、そもそもが年功序列で定年まで勤め上げることが前提なので、それこそ内定が出た段階で配属枠だとかある程度の役職に行くまでの既定路線といったものが固定化されるからだ。もちろん、私はそうした人材育成や人事の決済者ではなかったのであくまで推測ということになるが、昔からある年功序列の大企業に勤める人間ならまず間違いなく同意してもらえるだろう。
よく聞く感じのものだと、たとえば銀行だったら○○線沿線の支店長を経験していないと上には行けない、みたいな不文律のことである。
私が前職で経験した研修は「とにかくこの会社のことを覚えて早く文化に染まれ!」という感じで、会社の用意した型に嵌るにはどうすればよいか、というものだった。
それに対し今回の研修は、あなたという個人が活きる器はこの会社のどこにあるか、あるいは今はまだ器がないのならどう作るのか、といったメッセージ性のある研修であるように思う。
社長面談
研修コンテンツもある意味で会社資産であり、あまり具体的な話を詳細に書くのもはばかられるので、今回は社長面談についてのみ記しておこうと思う。
なにはともあれ、社長直々の面談があった。前職では考えられないことである。仮にあったとしても発言内容は事前にすべて調整され、練習をさせ られること請け負いだ。
それが、完全に徒手空拳で社長面談に臨ませてもらえるとは。めちゃくちゃフラットな会社だと思った。
ちなみに社内のメールでも「○○部長殿」とか書かない。社長相手でも「○○さん」である。前職の「役職+殿」には違和感バリバリだったが、目上に「さん」でメールするのもなかなかに新鮮だ。
また話が逸れたが兎にも角にも、社長面談である。同じく1月1日に入社となった数人でのグループ面談という形だった。
唐突に夢を問われる
面談の内容は一言で言えば禅問答のようだった。全員の年齢を確認したあと、社長から「あなたの夢を1分程度で教えて下さい」と問われた。
1人ずつ順番に回答していって、技術力の高いエンジニアになりたい、とか、最終的にはマネジメント力を発揮したい、とかそういった業務の延長線上にある妥当かつ具体的な回答が多かったと思う。
ちなみに私は「夢はないです」と答えた。これはふざけているわけではなく、その場でそれらしくこねくり回したことを言うくらいなら素直に回答したほうがよいと考えたからだ。
私にとって夢というと具体的な個々の話ではなくて人生の目的論のように捉えたので、まさに絶賛模索中の段階だ。ちょうど業界も大きく変えたので、これから見出すことになるだろう。
そういう経緯もあって全体としては以下のような主旨の回答をした。
夢はないです。というのもこれまで転職にあたって、新しいことを実行することによって見える景色はどんどん変化することを実感したからです。自分がこれまで前職で常識だと思っていた ことでも、行動に伴って視野が拡がれば極めて限定的な価値観と感じられるようなこともありました。ですから、今の断面ではこの瞬間やるべきことに全力で取り組んでいって、そこで得た新しい視野をもとにどんどん軌道修正していきたいと思います
個人的にこういう場は、普通の回答をするのではなく当たりでも外れでも他と違う回答をするのが重要だと思っている。というのも、今回こうした場が用意されているということはおそらく毎月、少なくとも2ヶ月に1度くらいは中途採用者に向けて社長は面談を実施しているはずである。そうしたなか、もしこの質問が固定だとしたらいわゆる優等生的な回答だと絶対に印象に残らない。こういう機会はとにかくなんでもいいから覚えてもらうことがなにより大事だ。とにかく目立つ、これは私の人生における重要な指針のうちのひとつである。
もちろん私が今回した回答も極めて独創的というわけではないが、少なくとも「何か」の質問に対して「有り無し」で答えているので少なくとも素直な回答よりはズラシがある。そして、まったく狙ってないとは言わないが「日頃から実際に考えている内容」をストレートに回答したというのも私なりのポイントだ。
個人的に、思ってもいないことでひねった回答を狙いにいっても深堀りされると詰むので、あくまで自分が普段考えている内容の中でもっともパラダイムシフトを起こせる回答を心がけている(明確な正解のない質問では特に)。
社長の反応
結論から言うと、社長には「その回答はグッドですね」と言ってもらうことができた。全員が回 答したあと、「夢」に対する社長なりの狭義の定義が説明されたが、おおむね私が捉えていたイメージと乖離するものではなかった。
そして、以下のような説明を受けた。
- 中短期的で局所的な「目標」ではなく長期的な人生の目的論といった観点での「夢」をしっかり持つこと
- もし今なにも夢が思いつかないなら「自分はまだ夢を持っていない」ということを認識できるようになること
- さもなくば50歳とか60歳になったときに「ただ時間に流された」だけの人間になってしまうこと
つまり、私は「夢」そのものは持っていないが、「持っていないこと」に対して自覚的である点がよかった、ということになる。
おわりに
まだ1週間しか経っていないが、個々人のキャリアに寄り添う文化や、発信することを尊ぶ文化があったりと、個人的には転職して間違いはなかったな、と思える研修内容だった。
現時点で、言葉面だけの欺瞞といった雰囲気を感じることもなく、なにより私自身にモチベーションがあるので、これまで以上に頑張って行こうと思う。
とっ散らかった文章になってしまったが、あまり推敲に時間をかけすぎても次の資格試験に割く時間がなくなり今度こそ落ちてしまうかもしれないのでほどほどにしておくことにする。